• ボイスドラマ「沈黙の約束」

  • Jan 25 2025
  • Length: 11 mins
  • Podcast

ボイスドラマ「沈黙の約束」

  • Summary

  • 点灯夫から授かった美しい声で民に神の意思を伝える巫女。しかしある日、悪魔の仕業により声を奪われてしまう。episode-14「声」の劇中劇となっている物語をスピンオフ(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 SE〜神楽の音 今年も文月(ふみづき)の神事(しんじ)がはじまった。 晦日(つごもり)の大祓(おおはらえ)を無事に済ませ、 夏越の神楽(なごしのかぐら)を舞う。 高山市内にある苔むした神社。 伎芸天(ぎげいてん)を祀るこの社(やしろ)で神楽を舞う巫女(みこ)。 それが私だ。 巫女の役割というのは神楽を舞うだけではない。 古来より、祈祷や占いもするし、なにより神託(しんたく)、つまり神の声を聞いて 民(たみ)に伝えることこそ巫女の役目なのである。 最近の巫女は神社の雑用係というイメージが強いけれど、 ここでは、神主の強い希望もあって、私が巫女として神の声を聞く。 父が氏子だった関係で、12歳のとき、私はこの神社の巫女となった。 神主は私の”声”を聞くなり、技芸天の生まれ変わりだと驚いた。 技芸天。 容姿端麗で楽器の演奏に優れ、”芸能の神”と言われる天女(てんにょ)。 どうして神社で天女を祀っているのか。 いろいろとややこしいが、この神社自体が、 明治時代、神仏分離(しんぶつぶんり)の政策でお寺から神社になったのである。 私は巫女として、神楽を舞い、神の声をきいて託宣(たくせん)をした。 人々は、託宣する私の”声”を、”神の声”だと寿ぐ(ことほぐ)。 私の声には、なぜか、引き込まれる艶があると言う。 ギリシャ神話で言えば、ハーピーやセイレーン、ローレライ・・・かな。 その”美声”で、船乗りたちを惑わし、水の中へ引きずりこむ。 私は、そこまで恐ろしくはないけど。うふふ・・・ 神の声を代読する託宣に、皆目を潤ませて、聞き入った。 ところが・・・ 夏越の神楽を舞い終わった瞬間、目の前が真っ暗になった。 頭の中には、地の底から響き渡る地鳴りのような音。 私はそのまま気を失った。 気がついたのは、社務所の奥に敷かれた布団の上。 私は慌てて起き上がり、本殿へと走った。 本殿の中央に鎮座するのは、伎芸天の仏像。 神社に仏像。初めて見たときは違和感があったが、 明治以前の「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」の名残である。 一礼して、伎芸天の前で居住まい(いずまい)を正す。瞼を閉じて心の声に耳をすますと、 ・・・!? え? どうして? なにも聞こえない。なにも話しかけてこない。 私は面(おもて)を上げて、伎芸天を見上げる。 そこには、虹彩の消えた、木彫りの仏像があるだけだった。 私、”神の声”が聞けなくなった・・・ 再び、頭の中が真っ暗になる。 落ちていく深い闇の中。 神の声とはまったく違う、禍々しい”声”が響き渡った。 『契約すれば、再び”声”を聞けるようにしてやろう』 お前はだれだ? 『なんとでも好きなように呼ぶがよい』 邪悪な声が私の頭の中にささやいてくる。 契約とはなんだ? 『お前に神の声を聞く力を戻してやる代わりに、お前の”声”をもらう』 な・・・そんなこと、 『できなければ、お前は永遠に神の声を聞けない』 なぜだ・・・、なぜ、私がこんな目に・・・ 『これは運命(さだめ)だ』 運命(さだめ)? 『お前がこの神社に初めてきたとき、お前に憑いていたものと私が契約した』 私に憑いていたもの?なんだ、それは? 『邪悪な魂、としか言えない』 邪悪な魂・・・ 私がこの神社にはいったのは、12歳。 当時、私は学校で酷いいじめにあっていた。 まさか、そのときの邪念が・・・ いや、違う。私は邪念など持たない。 小さな頃からなぜか私は般若心経が好きだった。 唱えると気分が落ち着き、不安や不満が消えていく。 色即是空(しきそくぜくう)・・・ いじめもいじめっ子もすべてはかりそめ。実態などないのだ。 だから、私にはいじめに対する邪念などない。 『お前にはなくとも、いじめを仕掛けるものどもには邪念しかない』 そんな・・・ 『契約の内容。それは・・・ 邪悪な魂を救ってやる代わりに、将来お前の一番大切なものを奪う』 一番大切...
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